決して特別なものではないけれど、気づくといつも手に取ってしまうものってありませんか?
似たようなものも色々持っているけど、ついつい同じものばかり使ってしまう…
私にとってそれは「イッタラ」のお皿です。
今回はそんな”イッタラ”と北欧フィンランドのデザインについてご紹介したいと思います。
イッタラとは
「イッタラ」は1881年 フィンランド南部のイッタラという名の小さな村でガラス工房として創業され、創業当初は家庭用のグラスや薬品,オイルランプ用の瓶などを作っていました。
しかし1930年代以降、アルヴァ・アアルト,アイノ・アアルト,そしてカイ・フランクといった名だたるデザイナー達の「美しさと機能性をすべての人のものにする」という信念を基に、これまでにない発想でものづくりを始めガラス工業におけるパイオニア的な存在となりました。
その後はガラスだけでなく、陶器、カトラリー、鍋、インテリアなど数多くの商品を生み出しているフィンランドデザインを代表するデザイン企業です。
カイ・フランクとTeema〈ティーマ〉
数多くあるイッタラのシリーズの中で最もシンプルで、そして最も愛されているのが“Teema〈ティーマ〉”では無いでしょうか?
このティーマをデザインしたのがカイ・フランク。
カイ・フランクはヘルシンキの美術工芸大学で家具デザインを学んだ後、テキスタイルデザイナーを経て、アートディレクターに就任し、陶磁器のデザインに携わりました。
そんなカイ・フランクが1953年に発表した”kilta〈キルタ〉”という器は、それまでの常識を覆すようなものでした。
当時は華美なディナーセットが主流でしたが、キルタは過剰な装飾を一切なくし、安価で、丈夫で、狭いスペースでも積み重ねて収納できるという、使い手側の暮らしを一番に考えたデザインです。
フィンランドだけでなく、国際的にも大きな評価を得たキルタは、生産技術の問題で1974年に廃盤となりますが、1981年にティーマとしてリプロダクトされ、以降は現在に至るまで世界中の家庭の定番の器となっています。
我が家にあるティーマも10年以上使っていますが、毎日手に取ってしまいます。
立ち上がりの角度や高さも持ちやすく、色も無機質な白ではなくほんの少しアイボリーがかった優しい白です。
シンプルで機能的、だけどどこか温かみを感じます。
「ふつう」だけどなんか良いな…こういうデザイン、実は一番難しいように感じます。
ザ・フィンランドデザイン展 -自然が宿るライフスタイル-
そんなカイ・フランクのデザインも見ることが出来る展覧会「ザ・フィンランドデザイン展-自然が宿るライフスタイル-」が渋谷 Bunkamura ザ・ミュージアム にて開催中でしたので足を運んでみました。
1930~1970年代を中心に、家具、プロダクト、テキスタイル、おもちゃや絵本も含めた250点以上のフィンランドデザインの作品が展示されていますが、そのどれもに共通するのが「自然と共にあるデザイン」だということ。
国土の7割以上が森林となるフィンランドにおいて、自然は貴重な資源でありアイデンティティでもあるため、そのデザインどれにも自然の温もりが感じられます。
左端に置かれているのが、アルヴァ・アアルト「パイミオチェア」。
フィンランド西部の療養所、パイミオのサナトリウムを建築する際にデザインされた椅子で、フィンランドの国樹とも言える白樺の曲げ合板で構成されています。
柔らかく有機的なデザインですが、これは結核患者が呼吸しやすい背もたれの角度を考えられているそう。
右から二番目に写っているのは同じくアルヴァ・アアルトのデザインした「スツール60」。
アアルトが開発した白樺の合板を直角に曲げる技術「L-レッグ」の3本脚で構成されたシンプルなデザインで、積み重ねた姿も美しいスツールです。
またスツールとしてだけでなく、サイドテーブルや、ディスプレイ台としてなど、使い手側が自由に使うことが出来る汎用性もあり、名作と呼ばれ愛されています。
また、テキスタイルの展示コーナーでは、草花などの自然をモチーフにした大胆で鮮やかなデザインがとても印象的でした。
これはフィンランドの厳しく長い冬も、室内で明るく豊かに過ごせるようにという工夫だそう。
これらの大胆なデザインは、まるで昭和の日本のファッションを見ているようなどこか懐かしさを感じさせるものでした。
もしかすると、フィンランドデザインは当時から日本でも受け入れられ、影響を与えていたのかもしれません。
今回は日本でも人気の高いフィンランドのデザインについてご紹介しました。
フィンランドデザインに共通するのが、「合理的な機能美」と「自然を感じさせる温もり」。
決してデザインを押し付けることなく、使い手側に立ったデザインであること…
私たちがフィンランドデザインに惹かれる大きな理由はそんなところにあるのではないでしょうか。