先日、東京国立近代美術館で行われていた隈研吾展に行ってきました。
隈研吾といえば、新国立競技場の設計も手がけた世界的に有名な建築家ですね。
一体どんな風に物事を見て、それをどのように表現しているのか…
今回は展示作品と共にご紹介したいと思います。
隈研吾が考える、人が集まる場所の5原則
今回の展示会のタイトルは『新しい公共性を作るためのネコの5原則』。
数多くある隈研吾作品の中から公共性の高い作品、つまり人が集まる場所の作品を選び、隈氏が掲げるキーワード「孔」「粒子」「やわらかい」「斜め」「時間」の5つに分類して紹介していました。
言葉だけではちょっと難しいので、展示作品とともにご紹介すると…
例えば「粒子」。
これは全てのものを粒子という小さい単位で捉えるという考え方だそう。
つまり、建築=粒子の集合体として捉えることで、建築も、その中に置かれるものも同列に扱うことができ、人に優しい建築ができるという隈氏の考察です。
隈研吾作品によく見る、小割りにした木材を組み合わせた技法も「粒子」の集合体を表現しているそうです。
この構造は『地獄組み』という日本に古くから伝わる木造建築技法で、元は障子などに使われるもの。
一度組んだら簡単には外れない頑丈な組み方の為、地獄組みと呼ばれるようになったそうです。
細かい木材の集まりは、まるで森の中にいるような心地よさも感じさせます。
また、『やわらかい』というキーワードでは、土壁や、竹など元来”やわらかい”素材を用いてきた日本建築をヒントに、柔らかさの可能性を広げた作品を紹介。
光を透過する布や、蚕の吐き出す糸を使った柔らかい建築が展示されていて、空間全体も優しい雰囲気に包まれていました。
5つのキーワードを通して隈研吾作品を見て分かったのは、人々にとって親しみやすく、心地よさを感じられる建築をつねに提案しているということ。
周りの風景に溶け込んだ自然な建築にこそ、人々が引き寄せられ、集いたくなる場所になるという隈氏の思いがよくわかる展示会でした。
ネコの目線で街を見る?
タイトルに入っているネコってどういう意味?と思った方もいるかもしれません。
これは、同時に展示されていたリサーチプロジェクト 、《東京計画2020(ニャンニャン)ネコちゃん建築の5656(ゴロゴロ)原則》のこと。
この不思議なタイトルのプロジェクトは、”ネコの目線で街を再認識する”ために半ノラのネコにGPSをつけてもらいその行動を記録したユニークなものです。
建築家は神の目線、上から俯瞰した目線で都市を見てしまうが、地面に近いネコの視点で都市を見ることでもっと親しみ安い建築が作れるのではないかと考えたそうです。
やはりここでも、親しみやすく、安心できる場所としての建築という考えが伝わってきました。
”建築”と聞くとどうしても難しく固苦しいイメージがありますが、隈研吾氏のつくる建築は心地よくどこかユーモラス。
実際に見ることのできる隈研吾建築は都内近郊にも数多くありますので、お散歩ついでに訪れてみてはいかがでしょうか?